■物部川流域圏上中流部における集落と神社の空間的特質■
研究者:楠本建
本研究の目的は物部川流域圏上中流部における集落と神社の空間的特質を明らかにする ことである。空間的特質とは、地域における建築の分布や建築正面の方位、建築の立地や 配置の特性、などから伺える空間の成り立ちのことである。
物部川は高知県中部を流れる河川で、河川沿いには数多くの集落と神社が確認される。 物部川流域圏というまとまりにありながら、場所によって立地地形や気象条件はさまざま であり、それぞれの状況に応じた集落と神社の空間があると考えられる。本稿では、まず、 集落ごとに集落空間と神社の空間の特質を明らかにする。次に集落ごとに明らかにした集 落と神社の空間的特質を比較することで、その共通点と差異を見いだし、立地や気象条件 の違いがいかに空間に影響を与えるかを考察する。最後に物部川流域圏という大きな枠組 みのなかで、流域圏全体の空間的特質と、集落単位の集落および神社の空間的特質がいか なる影響関係にあるかを考察する。このような段階的なプロセスを踏むことにより、集落 と神社の空間的特質を、集落ごとの小さな生活世界から流域圏全体という大きな文化圏ま でに至る総合的なスケールで明らかにできると考える。
現在、物部川流域圏上中流部は過疎化が進んでおり、集落と神社が消滅の危機に瀕して いる。集落と神社の空間を記録として残すことは、当時の生活の在り方を後世に残す手が かりになるという意味でも重要である。




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