■佐岡地区中後入・有谷の空間的特質
−未来の里山居住に向けた空間考察−■
研究者:大道直紀
対象地の高知県香美市佐岡地区に属する中後入と有谷は、高知県中部を流れる物部川の北岸に位置し、互いに里山を有し、かつ隣接する2地区である。この両地区は1960年代頃から過疎化や高齢化が本格的に進行し、小集落の幾つかは既に消滅、あるいはそれに近い状況にある。また、農地に目を転じると、多くは杉の植林により姿を消し、わずかに残存していた農地もまた耕作放棄地になってしまったものが多い。このような里山において、いかに生業をなし、聖地や葬地がいかに配され、そこにはどんな思想があったのかを記録する必要が急務であり、またどのような過程を経てこれらが現在に見るかたちへと変遷したかも辿る必要がある。
中後入と有谷両地区において、かつて里山が豊かに機能していたころの空間と、その現在の空間までの変遷を明らかにし、それぞれの地区の空間的特質を形成している要因を明らかにする。このとき、空間的特質は原型空間と現在型空間の空間構成ダイアグラムを提示し、同時に空間構成ダイアグラムの分析を通じて空間認識ダイアグラムを導出し考察する。
空間の特質を考察することで、空間記録だけでなく、その空間を支える観念、すなわち生活観や他界観の在り方を把握し、逆に、観念から空間を導く道筋を知るための手がかりをも得ることができる。また、どういった空間が空間変遷の有無や程度の大小を生むのか、そして、空間認識を含む、空間における「変わるもの」と「変わらないもの」を生むのかを、複合的に知ることが可能になる。






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