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卒業設計
2017年度

■氏神神社空間痕跡集積体■
設計:三島宏太

日本において神社は都市部から集落までいたるところに点在しており、日常風景の中にも不動的な存在として認知されている。多神教である神道では「八百万の神」と呼ばれるように多様な神々が存在し、それらを祀る神社も風土によって様々な容態を生み出している。中でも住まう地域の守り神は氏神と呼ばれ、氏神が祀られた氏神神社が地域ごとに存在する。しかし近代化によって人々の移動が長距離、高速化する中で人々の氏神や氏子であることへの認知は薄まり、氏神に対する信仰心も希薄なものになっている。また地方集落では少子高齢化に伴う過疎化により氏神神社が存続し続けることが困難な状況にある。

神社は社殿が損壊した場合でも、内部の御神体を他の神社に合祀することで信仰対象としての神社存続は可能である。だが損壊による空間そのものの消失は、長い年月をかけて社殿内空間が生成、維持されてきた証である様々な変遷の痕跡(以後「空間痕跡」と記す)を含めて消滅させてしまう。各地域の氏子だけで氏神神社の維持管理ができない状況に陥っても空間痕跡を持った社殿内空間を残す手法を考える必要があるだろう。

氏神神社が持つ現在までの空間痕跡を維持できるよう移築再配置する。また今後も新たな空間痕跡を積み重ねる事が可能な機能を持つ神社建築群として「氏神神社空間痕跡集積体」を計画する。